DEAR MR.D
怠け者の月からの使者が 踊りはじめた夜
湧き上がる雲の群れは とどまることを知らない
派手なメーキャップをした 船乗りたちは
白い布を巻きつけて 着飾りはじめたようだ
うたはいつでもうたわれていたけれど 誰ひとり
耳をすます奴は いなかったようだ
結論の出た問題を いつまでも議論している
誰もが知って知らない 素振りをしている
ぼくはと云えばだ ひとりの娘に恋してた
まだ誰も知らぬ話だ こいつはとっておきだ
彼女の名まえはメシアと云い 貧しい農家の一人娘
月夜の晩に恋をした 炎のように燃えあがる
噛み砕いてしまおうか すべての欲望を
イヤな想い出話も ついでに燃やしてしまえ
けなげにも手をさしのべてしまったことへの愚痴
そして笑われもしなかった たちの悪い鎮静剤
Mr.Dはとんだもう 昔に遠くて黒い国で
とんでしまってから たまらなく好きになった
ぼくは彼の写真を眺め なつかしがるのが精一杯
いつしかぼくは彼の 彼の子供を身籠った
いつかあなたが云ってた 転がり続けることはどんなだいって いつかあなたが云ってた ほんとは君と友だちになりたいって
でもぼくが欲しいのは ひょうの毛皮のふちなし帽
スペイン皮のブーツなんて ぼくはちっとも欲しくない